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モンスターハンター:ワールド レビュー

 

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みなさんはモンスターハンターというゲームに対し、どのような印象を持っているだろうか。「作業ゲー」「ガチ勢」「なんだか難しそう」アクション初心者お断りゲーム、そんな印象を持っている方も多いだろう。だがそんな認識はこの『ワールド』で過去になる。本作『モンスターハンター:ワールド』はこれまで数年間シリーズが積み重ねてきた伝統を見つめ直し、より良い方向へと導くことに成功している。

 

「改革」よりも「改善」の方向に重点をおいた数々の新要素

様々なギミックを内包した広大な狩場や、モンスター同士の縄張り争い、新しい武器毎の攻撃モーション。今回追加された新しい追加要素は数あれど、その殆どは「遊びやすさ」という言葉に集約される。モンスターハンターシリーズはタイトルを経る毎に、新しい武器や、新しいモンスター、新しいフィールドなど様々な追加要素をそのゲームシステムに組み込んできたが、『ワールド』において追加されたシステムの殆どに正直目新しさはない。だがそれは長い時間をかけて彫り進めた彫刻の仕上げに表面をヤスリがけするような丁寧な仕事である。

 

先ずプレイヤーが追加された新要素として目につくのは表題にもある「ワールド」を体現した広大なフィールドだろう。だがその実体は歴代のシリーズと殆ど大差はない。落石などといったハンターに有利な状況をもたらすステージギミックや、モンスターの行動範囲を分かりやすくするために細かく仕切られたエリアというのはこれまでのシリーズでも見られたいわば伝統のシステムである。しかし本作ではエリア間のロードを取り除いたり、どこからでも拠点に帰還できたり、移動をショートカットできるステージギミックを取り入れたりと「快適さ」「改善」に重きをおいたシステムが本作には盛り込まれた。

 

狩猟そのものもこれまでより遥かに快適になった。

モンスターハンター』シリーズにおける狩りのプロセスは

  1. モンスターを探し回る
  2. 発見したモンスターにマーキングする
  3. モンスターを攻撃し倒す

という3段階に分けることができるのだが、本作より導入された、自動的にモンスターの位置までナビをしてくれるシステム「導虫」のおかげで1と2の段階が不要になり、プレイヤーはよりモンスターに対して集中することができるようになったのだ。

うっかりマーキングを忘れて数十分フィールドを彷徨ったり、そもそも最初からターゲットが見つからなかったり、素材を採集中にモンスターから奇襲を受けてしまう、なんて事態を避けることができるようになったのである。

 

狩猟の最中にいつでも他のプレイヤーを呼べるようになった救援システムも心強い。

これまでマルチプレイを行うためには事前に狩りに行くメンバーを募る必要があり、先ずその時点で時間が取られてしまうという現状があった。せっかくメンバーが集まってもうちの一人が勝手に違うクエストを指定したりと思うようにいかない事態が発生することも多かった。

今作から狩猟中に他のプレイヤーを呼ぶことができるようになったことで、目的意識の高いメンバーを集めることができるようになった他、始めの数分は報酬金額が高くなるソロで自分の実力を測り、単独狩猟が無理そうだったらマルチプレイに切り替えるという柔軟な対応も可能となった。もし妨害行為を行うメンバーがいた場合はキックすることもできる。

その他、狩猟成功の鍵となる〇〇弾の使い心地を一新させた「スリンガー」や「何回ボタンを押せば目的のアイテムにたどり着けるか」という問題を解消したアイテムショートカット機能、一部アイテム使用時に走ることができる機能、大きな隙と無駄な時間を生むアイテム調合の手間を短縮する自動調合機能、レアアイテムのドロップ率改善など「快適さ」「改善」という面を重点的に抑えた新機能が追加されている。

 

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「改革」よりも「改善」の方向に重点をおいた数々の新要素は、初作から延々と続くゲームシステムを根本から刷新するものではない。だが1つ1つの不満を細かく潰していったことで、タイトルの積み重ねによって生まれた凹凸や歪みは取り除かれ、狩猟行為そのものを大幅に快適にし、どうしても作業感が強くなってしまう本シリーズに対し長くプレイヤーの心を結びつけることができるようにした素晴らしい仕事であると言える。ファンの期待に答えるということは、何も新しいものを生み出すことが全てではないのである。

 

 

美しいグラフィックと「縄張り争い」によってよりリアリティが増した世界観

先程まで本作は「改革よりも改善に重きを置いている」と述べてきたが、改革された部分が無いとは一言も言っていない。本作は『ワールド』という表題の通り、「世界」をプレイヤーに意識させる工夫を通じてこれまでゲームそのものとはつながりのない、あくまで背景でしか無かった世界観設定を全面的に押し出している。(見方を変えればこれもまた改善と言えるのかもしれない。)

 

 

その工夫として最初に挙げられるのが、グラフィックの向上によって草木や水、土煙といった自然界の描写が美しく描かれるようになったことだ。生い茂る密林や場所によって透明度の異なる水域、テラテラと光る鱗やフサフサとした体毛などこれまで以上に「現実感をもった自然」という部分に力を入れ、尚且つ先述した通りフィールドの探索を快適にし自然と歩き回らせることで、プレイヤーがこの世界の一員であるという認識を持たせることに成功している。

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私が特に好きなフィールドは「海と深海 」をモチーフにしたのだろう「陸珊瑚の台地」と「瘴気の谷」だ。泳ぐように空を舞う飛竜「レイギエナ」の死体が谷の底に存在し、そこに深海魚をイメージさせる奇妙な姿をしたモンスターたちが群がるという構図は現実の生態系まんまで非常に面白い。台地に住む飛竜パオウルムーがコウモリモチーフというのもまたいいデザインである(コウモリは集団で洞窟の天井に住み、力尽きると落ちて底に生息する生き物に食われる)

 

 

 

次に挙げたいのは豊かになったモンスターたちのモーションだ。本作に登場するモンスターは生物らしく非常に生き生きしている。大地を闊歩する中で呼吸の為に細かく顎が上下したり、眠るときは肺がちゃんと膨らんだり。個人的にディアブロスが食事するときにちゃんと設定通りに植物を食べているの光景には感動した覚えがある。

 

 

そんなより豊かになったモンスターのモーションの中でも一番好きなものは「縄張り争い」時のモーションだ。

今作から一度の狩りにおいてターゲットとなる大型モンスター以外にも「元々その場所を住処にしているモンスター」が同時に発生することになった。モンスターの同時発生自体は過去作において「乱入」という形で実装されてはいたが、新たなモンスターが狩りの最中に「乱入」することと「自然の中で狩猟を行う」というゲームデザインが有機的につながっているというわけではなく、ある種のゲーム的なハプニング要素としての意味合いでしかなかった。(「イビルジョー」という乱入というシステムと生物としての生態が密接に関わるモンスターがいたはいた)

しかし今作においては乱入ではなく「元々その場所に住み着いていた」という設定にすることで、新手の出現にハプニング以上の意味合いを持たせることに成功している。これまでMHシリーズに登場するモンスターの生態というのは、一匹ずつそれぞれの設定が存在していたものの、作中においてそういった描写を見ることができる場面は全くと言っていいほどなかった。殆ど「ゲーム内PV」という形で、ゲームとは切り離された場所から紹介を受けることが少なくなかった。NATIONAL GEOGRAPHICを観るような気分である。

だが、今作は新手のモンスターと狩りのターゲットとなるモンスターが、自信の縄張りを巡って出会った途端争いを始めるのだ。

 

ボルボロスに巻き付くヴォルガノス、アンジャナフに喧嘩を売って噛みつかれるドスジャグラス…これまで映像でしか観ることができなかった情景が目の前でリアルタイムに行われていることに感動した。モンスターが1キャラクターとしてではなく1生物として生きているのだということを知識ではなく感覚として理解できた。自分もあんな風に食われてしまうのだろうか。自然はそこにあった。

 狩猟対象とはならない原生生物もまた本作の世界を彩る一翼を担っている。原生生物は網で捉えることができ、自室でペットとして飼育することができる。飼育と言ってもただただ眺めることしかできないが、この世界にはこんな生き物もいるのかと新大陸に思いを馳せるのも一興である。

 

 

 荒削りすぎるストーリー

丁寧に磨かれたゲームシステムや洗練された世界観描写とは異なり、本作の目玉の1つとされるストーリーはあまりにも粗雑な作りだと言わざるを得ない。狩猟を通じて古龍の謎を解き明かすという1ハンターとしての物語と狩猟行為がしっかりと結びついている題材は、これまでのストーリーとは異なり評価に値すべきだとは思われる。(歴代タイトルのストーリーは〇〇を狩猟/調査する為に主人公が物語の舞台に訪れるというものが殆どだったが、それまでの過程にある対象以外の狩猟行為に人助け以上の理由を持たせることができなかった。要するに人助けする暇あるなら最初からそれ狩れよという話である。)

だが、いくら超人的な身体能力を備えているとはいえ、非武装の受付嬢を主人公の「相棒キャラ」と設定し、彼女を起点に物語を展開させるというのはいささか無理があったのではと思わざるを得ない。

彼女はあくまで事務方の存在であるため、狩りの際には特にプレイヤーに対して利益をもたらすことはない。(強いて言えばクエストを取ってくるくらいだろうか)寧ろ作中では持ち前の好奇心が暴走し、相棒というよりかトラブルメーカーのように描かれている。主人公はあくまでプレイヤーの分身であり個性を持たせることができないため、物語を進めるには外的なトラブル(要因)を発生させる必要があるが、その役割を「前線に立てない」キャラに任せた場合、「現場のことを何も分かっていない」という不満が出るのは当たり前である。

オトモの名に相応しい強化を受け、いつも共に戦ってくれるアイルーの方がどちらかと言えば相棒感抜群ではないだろうか。

また、実際はソロプレイであるにも関わらずところどころ仲間と共闘しているかのような演出が入ることにも疑問が沸く。これまでのストーリーで恒例だった「手に負えないから君に全部任せる」という展開を避けるためだったのだろうが、ワイプで「お前には負けんぞ」と言われてもそいつが現場にいない以上気持ちのうえで特に盛り上がりが起こらない。

いつでも救援できるシステムとの兼ね合いのせいでCPUキャラクターを出すことが難しかったのではと推測するが、こんな「口だけ」の場面を作るよりいつもの「お前に任す」という筋書きのほうがマシだったのではないだろうか。そしてクリア後も特にエピローグとして「主人公が新大陸へ来た理由」や「大団長の本来の実力」といった作中に張られた伏線を回収する機会に恵まれることはない。

モンスターハンターシリーズにおいてストーリーはチュートリアル扱いであり、さっさと終わらせることが肝要とされるが、チュートリアルであるからこそ丁寧にやるべきだと私は思うし、ストーリーにも注目という宣伝をしたにも関わらずこの内容はがっかりである。

 

 

微妙なエンドコンテンツ

モンハンの醍醐味と言えば先述した通り、ストーリーのクリア後にある。

ストーリーの時点とは比べ物にならない力をもった強敵が待ち受ける上級やその上の階級にあるクエストに繰り返し挑戦し、素材を集め装備を整えることで、上級のクエストでしか狩猟できないさらなるモンスターへと戦いを挑む。

だが本作はクリア後でしか戦えないというモンスターが存在しない。本作に登場するモンスターはほぼ全てストーリー内で登場するからである。いくら既知のモンスターと戦い装備を整えても、それを試す未知の強敵が全く存在しないというのはいささか新鮮味に欠け面白くない。一応「歴戦個体」というモンスターは存在するものの、単純に既存のモンスターがステータスが大幅に向上しているバージョンというだけで、ここでしか見られない新規モーションを見せてくれるというわけでもない。歴戦個体は一撃一撃が重く、場合によっては即死となる場合となる攻撃も存在するため必然的にプレイヤーは如何に攻撃に当たらず敵を倒すかという戦法を取らざるを得なくなる。その結果、いわゆるハメ戦法のようなより効率的な戦法が重視され、作り上げた自慢の武器で闘うという楽しみが少なくなってしまう。

筆者は新規モンスターの無さと武具制作に必要な素材のドロップ率が改善され装備が作りやすくなったおかげで、早々に「やることがなくなった」状態に陥ってしまった。(他の武器種に手を出すことで事なきを得たが)

現在追加されたイビルジョーを始めとする新規モンスター追加アップデートが予定されているが、個人的にはもっと早くやってほしいと考えている。月1頻度でやって欲しい。

 

 

 

総評

これまで数年間大きく成長させてきた原石は、今節丁寧に磨かれた結果『モンスターハンター:ワールド』という美しい宝石として今一度生まれ変わった。ナンバリングの仕切り直し作品として相応しい輝きを誇っていると言えるだろう。まだまだ磨き足りない部分はあるが、その姿はもうあのころの野暮ったい初心者お断りゲームでは無い。狩猟のしの字も知らぬプレイヤーはもちろん、もうハンター家業は懲り懲りだというユーザーにこそ遊んで感動して欲しい大作である。