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Wolfenstein Ⅱ THE NEW COLOSSUS レビュー

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人は何故時として悲哀と絶望に愉悦を見出すのか。

4つ数える、息を吸う。 4つ数える 、息を吐く。ナチスの軍兵共を脂肪とタンパク質の塊に変えながら、モニターの前の私はそんなことを考えていた。

この『Wolfenstein ii the new colossus』というゲームは、「先史遺産より凄まじい科学力を身に着けたナチス」によって支配された世界を舞台に繰り広げられる、血みどろの革命譚である。

激しすぎる人種差別、憎しみの連鎖、理由もなく覆いかぶさってくる理不尽、暴力、悲しみ、そして死。どうしようもなく救い様の無い物語なのだが、これまたどうしようもなく面白いのだから困ったものだ。

ちなみに本作は『Wolfenstein: The New Order』の完全な続編にあたる。一応モノローグの最中に前作にて行われた事柄が語られるものの、物語を100%味わいたいのであれば前作からのプレイをオススメしたい。

 

先ずはストーリーについて紹介していこうと思う。

この物語は前作の最終決戦における後遺症で、主人公である「ブラスコビッチ」が下半身不随となってしまうところから始まる。ブラスコビッチは元アメリカ軍の兵士であり、戦時中は勿論、連合国軍がナチスドイツに負けてしまった後もレジスタンスと合流し、ナチスと戦い続けてきた「ナチス・スレイヤー」だ。

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モノローグの途中で「主人公の2人の相棒のうち、どちらを助けるのか」という選択肢が発生するが、これによって物語の大筋が変化するということはない。途中入手できる特別な武器が変化したり、キャラそれぞれ固有のシーンが置き換わるだけである。

 

前作にて見事ナチス躍進の原因ともいえるマッド・サイエンティスト「デスヘッド」を討ち滅ぼすことに成功したブラスコビッチだが、その代償はあまりにも重すぎた。

ナチスを倒し自由を取り戻すために山岳基地への単独潜入から放射能汚染地帯の探索、果ては宇宙ステーションまで日帰り弾丸ツアーを行ってきたブラスコビッチの肉体は既に限界を突破しており、正直いつ死んでもおかしくない状況にあった。下半身不随で済んだことが奇跡であったくらいだ。だが現実は無情にも彼の休息を許すことは無かった。

かつて始末しそこねた凶悪なナチスの女軍曹「フラウ・エンゲル」が出世を遂げ、「デスヘッド」がいたポジションに収まっているではないか。復讐鬼と化した彼女の働きにより、ブラスコはボロボロの身体を引きずり起こされ、再び戦乱の渦に巻き込まれることとなる。

 

 

この悲惨な物語の何が面白く素晴らしいのかと言えば、どのレビューでも言われていることなのだが、展開の緩急が絶妙であるということだ。目を塞ぎたくなるような惨状が続くと思いきや、突如コメディのような笑みを誘う場面に切り替わり、しばらくすると非情な現実が後ろからやぁこんにちはと声をかけてくる。出演している役者陣の演技もまた素晴らしい。私は日本語吹き替え版をプレイしたのだが、ブラスコビッチ役の中田譲治氏の演技は勿論のこと、今作のボスキャラである「フラウ・エンゲル」を演じた片貝薫氏の演技は狂気と混沌に塗れた恐怖の象徴とも言える最高のものだった。今でも夢に出てきそうだ。

さらには寡黙な主人公による独白や、汚いブラックジョークの応酬など現状の悲惨さを暗示させる秀逸な演出も本作の物語を盛りたてるのに一役買っている。特に虐待を受けていた主人公の当時の記憶のフラッシュバックと、双子を妊娠している妻が身重の身体で幾度となく戦場に立つことになるシーンはプレイヤーの不安をより一層のものにさせる。

 

 

ゲームシステムに関しては1990年代より続くシリーズの伝統を継承しながらより爽快感を演出する方向に特化させたFPSとなっている。

 プレイヤーの素早い移動と、機械が爆発を起こし敵の四肢がはじけ飛ぶ演出はストーリーのモヤモヤを吹き飛ばすかのようにとても気持ちが良い。

ひとたび2丁の拳銃を両手に持てば、ランボーさながらの突撃プレイも可能である。

だがプレイの気持ちよさとは裏腹に、難易度は意外とシビアだ。前作の体力上限は「100」だったのだが、今作は物語の都合上なのかその半分の「50」。敵の火力も高く、何も考えなしに突っ込むと一番低い難易度ですら蜂の巣にされてしまう。その為、

「MGS」や「アサクリ」程ではないにしろ、簡単なステルスプレイはゲームを勧める上で必要になってくる。敵を集められる前に警報を鳴らす司令官を暗殺し、ゆっくりステージを探索するというの方法も時には必要だ。

本作では敵をKILLするために様々な方法を取ることができ、その仕方によって対応するスキルがアップグレードする。ただ銃で脳天を撃ち抜くだけではなく、重火器で溶かしたり、コンテナをぶつけてみたり、爆殺してみたりなど、色々と試してみるのもまた一興だ。

スキルだけではなく、武器もカスタマイズすることができる。武器1つ1つに3種類の方向性が用意されており、複数選択することができる。消音性を高めよりステルスを楽しめるようにするのか、一発の威力を高めるのか、連射性を高めるのか。先程述べたデュアル要素も相まって、どんな武器で戦うかはプレイヤーの個性が発揮されることになるだろう。ちなみにアップグレードに必要なアイテムは入手量が限られているので注意だ。

前作は一本道だったが、今作からは新しい要素としてサブミッションが追加されている。本編のステージを小さくしたような場所で敵の将校を殺害する、という内容のものが殆どであり箸休めにはちょうどいい。収集要素もあるが、そこまで気にする程のものではない。集めるのが好きな人は好きかなぁという程度。

 

その他注目すべき点としては、「ナチスによって支配された世界」を演出するにあたって用意された世界そのものだろう。鉄、石、コンクリート。近未来的な軍需施設と、それとは対象的な廃材と業火で埋め尽くされた郊外。ゲットーと化したニューオリンズ放射線を浴びたニューヨークだった場所。目の前の敵からふと目をそらすと戦争の悲惨が嫌でも伝わってくる光景が広がっている。「ナチ仕様」に置き換わった小物群も面白い。設定、特にメカニック周りはかなり荒削りなものになっているが、ここまで「ツッコミ上等」なオーバー・テクノロジーになっていると逆に笑えてくる。

 

 

『Wolfenstein ii the new colossus』は正統派1人プレイFPSとして最高クラスの作品と言えるだろう。素晴らしい物語とそれを助けるギミックの数々は、脅威的な没入感を引き起こし、悲惨で救い用の無い世界の一員として、ナチを徹底的に潰すことを許してくれる。普段PvPFPSを遊んでいてストレスが溜まっている方や、戦争モノが好きでグロテスクな描写が平気な人は是非プレイして欲しい。