ちら裏

ちらしの裏に雑に書きなぐるイメージ

INSIDE レビュー

f:id:morokyu:20170925172151j:plain

「ゲームは芸術か否か」。コンシューマーからだけではなく、インディーズからの製品販売が一般的になり、多種多様なゲームが世に出回るようになった昨今において、よく挙げられる話題の1つだ。

作品それ自体として完結されている「絵」や「音楽」「映像作品」「造形美術」と異なり、ゲームはプレイヤー=鑑賞者にプレイされることで初めてゲーム足りうる。即ち、評価をする側の人間が作品を構成する1要素として組み込まれている、ということであり、個々人のプレイ内容によって作品から受けるインプレッションが他のカテゴリのそれとは大きく異なってしまう。その為、プレイヤーの遊び方によってゲームそれ自体が持つ「芸術性」というものは異なってくる。

これまで私は「大神」や「人喰いの大鷲トリコ」といった、特徴的な映像美によって視覚的に楽しませてくれる作品や、「MOON」や「Myst」など音楽や、ストーリーラインの文学性において心動かされるような作品をプレイしてきたが、今回私が遊んだ2D謎解きアクションゲーム「INSIDE」は、私がこれまでゲームから感じ取ってきた芸術性を1つにパッケージングしたような素晴らしい作品であり、どんなプレイヤーがプレイしても一定の「芸術的な良さ」を感じさせるものだ。

 物語は赤い服を着た少年が坂から転がり落ちてくるところから始まる。しかし文字や音声を使った明確なストーリーテリングがあるわけではなく、その内容はプレイヤーの想像に委ねられるようになっている。

どうやら組織に追われているらしい名前の無い赤シャツの少年は、追手を振り切りながら、組織が経営する工場に忍び込むことになる。そこに待ち受けていたのは、目を疑うような光景だった。

 

 「INSIDE」は素晴らしい「芸術性」を持っていると前述したが、それを構成する要素として先ず挙げられるのは、そのグラフィックの独特な美しさだ。

ただ写実的というわけではなく、絵画的な美しさを感じさせる映像は実に緻密に作り込まれており、工場内に舞うホコリや葉に落ちる雨のしずく、窓から差す陽光の美しさ、灰色1つとってもコントラスト豊かな曇り空を観れば、そこにかけた労力が如何に凄まじいものかを感じることができる。

注目すべきはその類稀なる映像美だけではない。プレイ中に流れるBGMもまた、職人技を感じることができる素晴らしいものだ。なんでも人間の発声からくる骨伝導を再現する為に、人間の頭蓋骨を音のフィルターとして使い収録されたものだそう。

 

・フィルター抜き

soundcloud.com

 

・フィルターあり

soundcloud.com

オリジナルの音楽それ自体は80年台のホラー映画を彷彿とさせるシンプルでクールなものだが、この頭蓋骨フィルターを通した結果、劇伴でありながら自然音として成立しているかのように聞こえるのだ。

 

そして何よりもこの「INSIDE」を芸術足らしめているのが物語の「文学性」なのだが、これに関しては是非御自身でプレイして、頭で考えて、自分なりの結論を導き出して欲しいところである。

ネタバレを避ける為、あまりここでストーリーについて詳細は書かないが、強いて言うならこの作品のタイトルであり「INSIDE」という言葉を頭の片隅にでもおいてプレイして欲しい。序盤の逃走劇から終盤における怒濤の展開まで、作品を通して鍵になる言葉である。

 

 

ここまで「INSIDE」の芸術性について書いたが、ここからはゲーム性についてまとめていく。

INSIDEは前述した通り2D謎解きアクションゲームであり、また「死にゲー」でもある。謎解きのシステムは「ジャンピングパズル」方式を採用しており、謎解きに失敗した時だけではなく、舞台から転落した時、水中に長いこといた時など、結構な頻度でゲームオーバーになってしまう。だがかなり細かに設定されたセーブポイントや、数多くの「死に方」の演出によって、ゲームオーバーになってしまったことを「マイナス」であるとプレイヤーに考えさせない工夫が成されている。

パズルの難易度は序盤から終盤にかけてゆっくりと上がっていくが、決して解けない難易度のものはない。(強いて言うなら隠しEDに必要なものくらいだろう)

ボタン操作は単純で、「ジャンプ」「ものに捕まる(ものをつかむ)」「移動」の3種のみだ。だが、パズルの内容は「制限時間内にゴールに辿りつくもの」、「複数のギミックを連鎖させるもの」、「スニーキング」など多岐にわたる。

 そしてこの謎解きはストーリーとシームレスに連携している。逃走劇、工場内への侵入、そして少年が工場内で達成すべきコト、様々な目標を達成する上で超えるべき壁として自然とそこにあるように見せる工夫がなされている。

 

 極めてシンプルなゲームシステムであるため、娯楽としてのおもしろさ、という面で考えれば確かに人を選ぶゲームだとは思うが、こと「芸術性」という面においては、この「INSIDE」というゲームは本当に素晴らしい1本であるということは明らかだ。

しかし冒頭で記した通り、ゲームという作品はプレイヤーによってプレイされることで初めて「作品」として成り立つ。このレビューを読んだ方は是非「知ったかぶり」になることはせず御自身でプレイすることをおすすめしたい。