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ドラゴンクエストⅪ ps4版 レビュー(※ネタバレあり)

以前クリア前に以下のような記事を書いたが、

amagi.hatenablog.com

 

この記事を書いている時点で私は確信していた。「ドラゴンクエストⅪという作品は、紛れもない傑作である」と。そして裏ボスまで倒し、物語を終えた今現在、この確信は、現実に変わった。

 

 

ゲームデザインに関して

先ずはドラクエⅪのゲームデザインに関して私が思ったこと。

ドラクエⅪは「世界」というものを強く意識して世界観がデザインされていると感じた。

上部の記事内でも触れた通り、オープンワールドさながらの美麗な風景や、モンスターの生態系を意識させるような描写に代表される、これまで別個のものであった「バトル」「ワールド及びストーリー」「ダンジョン」をシームレスにつなげるゲームデザインは、これまでのドラクエシリーズには観られなかった素晴らしい工夫だといえる。

この工夫によって、私達プレイヤーは「ゲームをプレイしている」のではなく、「世界を旅している」ような感覚をより一層味わうことができる。

 

村人のセリフの多さにも驚かされた。世界各地、旅先において様々なモブキャラクター達と主人公一行は出会うことになるのだが、本当にモブなのかと思うほど、彼らは個性豊かなセリフでプレイヤーを楽しませてくれる。

物語が進展すると、彼らのセリフもまた一新される。一人あたりのテキスト量を考えると、モブ全体のテキスト量は一体どれ程になっているのだろうか。

ちなみに私の好きなモブキャラクターはクレイモランの王女、シャールだ。美人で真面目な学術系メガネっ娘という時点で最高だが、一度悪事を働いたリーズリットに対し恩赦を求めるその甘さも良い。

 

戦闘システムに関しては良くも悪くも歴代のそれと殆ど変わってはいない。所謂「ドラクエらしい」ターン制のバトルシステムがそのまま用いられている。新たな機能として過去作品において使われた「テンション」の概念に似た「ゾーン」のシステムが導入されているが、キャラが「ゾーン」に突入するのは如何せんランダムな為、ここぞという場面で発動しないことも多く、レベリングなど特定の用途以外では活用しづらい。

最近のRPGにおいて利用されている「スキルパネルシステム」も導入されてはいるが、所謂「必須スキル」をとってしまえばそれに頼りきりになってしまうことが多いため、戦術を拡張するまでには至っていない。

全体として戦闘システムにはほぼ変化は見られないのだが、作中登場する敵側に対しやたらと状態異常が有効であったり、逆に状態異常を利用した搦め手を多用するボスが多く、対策を十分に練ることができない初見ではあっさりとやられてしまうこともある。そういった意味で戦闘はこれまでのような「ルカニで防御を下げてバイキルトをかけて殴る」というシンプルなものではなくなっている。

 

それでも全体的な戦闘、ひいてはゲームの難易度は低い。それは敵が弱いというわけではなく、主人公達が強くなるための快適な環境が整っているからにほかならない。レシピさえ手に入れば鍛冶によって強力な武器が作成可能なほか、ルーラが室内、ダンジョン内で使用可能であったり、一番わかり易い例で言えば「戦闘でもらえる経験値の多さ」が挙げられるだろう。

今作は本当にレベルが上がりやすく、所謂「レベリング」にかける時間が他の作品のものより圧倒的に短く感じられた。これまで趣味の範囲であった「カンスト」も少し時間をかければ誰でも簡単に出来るようになっている。

難易度に関しては賛否両論あると思うが、今作のユーザー層を考えれば妥当であり、高難易度プレイを行いたい人は公式で導入されている「縛りプレイ」の機能を利用したりセルフで縛り内容を設定するなどすればいいだろう。

 

 

ストーリーに関して

次は肝心のストーリーに関してだが、所謂「表ストーリー」と呼ばれる本編に関してはいかにもJRPGらしい、ドラクエらしい王道であり、素晴らしい出来栄えだったと思う。

「勇者の生まれ変わり」として、世界を救う使命を背負って生まれてきた主人公は、作中何故か「悪魔の子」と呼ばれ行く先々で忌み嫌われながら、それでも志を同じくする仲間と出会い、世界各地を旅し、困っている人々に対し手を差し伸べる。果てしない旅の末に、自らの出生の秘密や、世界を裏で牛耳る魔王の存在を知り、世界を救うための鍵を入手するまでに至るのだが、あと一歩のところで、自らが勇者である証とも言える「勇者の力」そして「世界」を魔王に奪われてしまう。

勇者の証を失い、悪魔の子どころか「ただの人」になってしまった主人公が、これまでの旅の中で出会ってきた様々な人達から想いを託され、「真の勇者」へと成長していく。

 

「勇者とは…勇者とは決して諦めない者のことです!」というセリフに象徴されるように『「勇者」とは』というドラクエの根源的な問題に立ち返る今作のストーリーは、笑いあり涙ありの非常にドラマティックな構成になっていて、止め時がわからない程面白いものだった。

私が本編において心に残っているシーンは、誰もが印象に残っているであろう「ベロニカの死」に関する場面だ。

自らに課せられた使命を忠実に守るため、命を賭して主人公一行を逃がす場面は涙なしには観ることができなかった。ベロニカは私の中でお気にいりのキャラクターであったため、そのシーンのあと不覚にも声を上げて泣いてしまったのを覚えている。

確かに伏線はあった。「双子の姉妹のスキルパネルの形が丁度上手い具合に重なる」というのがおそらくわかりやすさで言えば最たるものだろう。

 

クリア後のストーリーである「裏シナリオ」に関しては、かなり贅沢な意見だと思うが、少々物足りなく感じた。表シナリオが「勇者」についてスポットを当てたものに対し、裏シナリオは「世界そのもの」ひいては「ドラゴンクエスト」にスポットを当てた壮大なものになっている。ただテーマが壮大な分少し煩雑になっている部分も多少見られ、キャラクター個々人の掘り下げが正直足りないなぁと思ってしまった。詳細は省くが、せっかく一時的に世界が平和とは言えずとも落ち着いたのだから、個々の主要キャラクターの使命にとらわれないプライベートな部分が見たかった。特にマルティナは「王女」という設定なのだが王女らしさを感じさせるシーンが足らないと思う。

 

裏シナリオそのものは表同様おもしろく十分に楽しむことができた。「過ぎ去りし時を求めて」というテーマが回収され、今作の世界そのものの秘密が明らかになっていく。

無事に魔王を倒し、世界に平和をもたらした主人公は、「時のオーブ」の存在を知り、ベロニカを、そして騒乱の最中命を落とした数多くの人たちを救う為、「過ぎ去りし時を求めて」、魔王によって世界が乗っ取られる直前まで時を遡ることを決意する。

時を遡るということは、その時点より後の出来事、仲間たちとの冒険が「なかったこと」になってしまう、そして無事にタイムスリップが成功できる保証も無い為、正直やめて欲しいと仲間たちが主人公に懇願してくるシーンがあるのだが、これが本当にいいシーンで、また声を出して泣いてしまった。

姉を助けたい想いと主人公には無事であって欲しいという想いが交差するセーニャ、

もう十分頑張ったでしょ、という言葉を投げかけるシルビア、

表面上は笑顔でいても、思わず主人公に手を伸ばしてしまうロウ、

そして複雑な心持ちのメンバーの中、唯一「しかたない、わかったよ」って言えるカミュ

思い出すだけで涙がこみ上げてくる。

そして時を遡ったあとのベロニカのセリフでまた泣いてしまう。もうほんと最高。

時を遡って魔王の企みを事前に阻止するだけでなく、「表」において救いがなかった人たちを改めて救済するという場面がしっかりあったのも良かった。

 

「過ぎ去りし過去を求めて」という表題に則り、作中過去作品のオマージュが多用されていることに対し、当初私は不満を持っていたが、裏シナリオをプレイしたあとはオマージュの多用に対してある程度納得はいった。

 正直あのEDはマジでびっくりした。これに関しては公式がネタバレを避けているので詳細は省くことにするが、なるほどねという気持ちになる。

ただあのEDをやるならば、時を遡ることに関する設定をもう少ししっかりして欲しいと思う。上記の部分と重なるのだが、どうにも裏シナリオは細かい部分が煩雑だ。全体が素晴らしいだけに細部がどうしても目立ってしまう。資料集にこういった点は纏められることを期待するのだが、なるべく作中で説明して欲しかった。

 

 

全体的に

 何度も言うが、両面含めて今作のストーリーは本当に素晴らしいものだった。

ゲームデザインもこれまでのナンバリングタイトルとは一線を画するものになっており、より没入感をもたらしてくれるものになっている。

ドラクエⅪは紛れもなく傑作であり、JRPGの歴史に刻まれるべき作品だと言えるだろう。

できることならば「過ぎ去りし時を求めて」、未プレイ時に遡りもう一度新鮮な状態で繰り返しプレイしたいほどだ。